私は診断以来30年ほどガングリオンと付き合い続けています。ガングリオンとは、中にゼリー状の物質の詰まった腫瘤のことを言い、私の場合、右手首の甲側に最初の症状が現れ、その後左手にも出現しています。2回の手術にもかかわらず、再出現(発症?)を繰り返し、現在、右手は沈静化、左は手首の甲側にのみ、目で見てガングリオンと判断できる症状が確認できます。この記事では私のガングリオンとの付き合いを紹介していきます。紹介することで、同じ症状に悩む人の参考になればと思います。
ガングリオンとの出会い
最初に症状が出てきたのは確か小学校の高学年、5年生か6年生頃だったと思います。右手の手首の甲側に小さなこぶ、ふくらみのようなものが出てきていることに気が付きました。触るとコリっとやや硬い感触の何かが内部にあるのがわかりました。
母に伝えるとすぐに「ガングリオン」だろう、との回答が返ってきました。そう、私の母もガングリオン持ちだったのです。これが遺伝かどうかはともかく、親子は少なからず似た部分があるんだな、と当時は思ったものです。
ふくらみは小さく、痛みもなく、もちろん生活に支障もなかったので、すぐには病院に行かなかった記憶があります。
私はわりと外で活発に遊んでいたので、手首はよく使っていました。しかも、子供ってこういうのは気になっちゃいますよね。頻繁に触ったり、ぐりぐりと押してみたりしていました。
手首を使っていたせいか、ぐりぐりと触っていたせいかは不明ですが、ふくらみはあっという間に大きくなり、最大時は直径で約3cm、高さで0.5~1cm(手首の曲げ具合による。)ほどもありました。
そのころには特定の状況下で痛みが発生するようになっていました。具体的には、ボールを投げるような、手首のスナップを大きく使う動作、そして腕立て伏せのように、手首に加重(加圧)をかける動作で痛みが生じていました。
ガングリオンの治療と手術
ようやく病院に行くことになり、診断結果は予想通り「ガングリオン」でした。このときの医師の、対処と治療に関する説明で覚えているのは、以下の4つです。
- 手首に負荷をかけないようにする
- 注射器で中のゼリー状の物質を抜く
- 手術で取り除く
- 注射器や手術で取り除いても再発する可能性がある
とりあえず現状の生活(普通に運動や外遊びをし、手首を使う生活)で痛みがあるため、注射器で中のゼリー状の物質を抜いて様子を見ることにしました。
(ちなみにここで出てきた注射器および注射器の針は、極度の注射嫌いの人なら失神するんじゃないか、ってくらい太かった。)
注射器で中の物質をとった後は見た目は普通に戻り、痛みもすぐになくなりました。
これで治った、と調子にのったのか、勘違いしてしまったのか、特に手首をかばうようなこともしなかったせいか、(いや、そもそも痛みもなくなって見た目も元に戻ったら、今までのように手首を使っちゃうのが子供としては普通かもしれません。)残念なことにガングリオンはまた出現し、大きくなり、痛みも出てしまうのです。
そして、状況は悪くなります。病院で再びゼリー状のものを注射器で取り出してもらうものの、取るたびに再発…いや、「再発」よりも「再蓄積」のほうが正しいかもしれません。とにかく次のゼリー再蓄積までの期間がどんどん短くなっていきました。
私はついに、ガングリオンの摘出手術を受けることにしました。このときが中学1年だったと思います。運動部で手首も使うため、手術して治したかったのです。
しかしこの決断を今では後悔しています。手術をしなければよかったと思っています。なぜならこの手術のあとも再発してしまったからです。治らないのに4cmほどの手術痕だけがずっと残るなんて悲しいじゃないですか。もちろん再発の可能性も手術痕が残ることも知った上で手術を受けてはいるんですけどね。
ガングリオンの再発
ガングリオンが再度ほぼ同じ場所に現れたのは 最初の手術から1~2年後、中学3年のときだったと思います。2回目のときも最初のうちは何度か注射器で取っていましたが、3年になって部活動も完全に終わったタイミングで2回目の手術をした記憶があります。
今思うとなぜ2回目の手術を受け入れたのか多少の疑問が残っていますが、1度手術をしているのだから2度も3度も同じ、治る可能性があるなら受けるか、といった心境だったと思います。しかも2度目は医師(1度目と同じ医師です)が手術前も手術後も根治に対してまずまずの自信を持っていたのを覚えています。
結果またガングリオンは出てくるのですが。。。
医師の手技や経験値によっては根治できたのかもしれませんが、そのときの先生に落ち度があるとは思っていません。
ちなみに、手術は2回とも全身麻酔で行われました。1回目と同じ部位を切っているのでメインの手術痕は1箇所だけです。(メインと書いたのは2回目の手術のとき、当該手術の処置に関連してすぐ近くに管を通すために別の切り痕が1.5cm追加されたためです。)
三度目の発症と心境の変化
三度目のガングリオンが現れ始めたのは高校1年か2年のころでした。高校では部活動をすぐやめたのでもしかしたらガングリオンもおとなしくなってくれるかもしれない、なんて思っていたけど甘かった。まあ、それもそのはず、部活動ほどではないけど朝や昼休みに友達とよくバスケをしていたので。
実はそのころ、左手首にも初めてガングリオンの芽が出始めていました。このときはもう左手の初手術はもちろん、右手の3度目の手術、という選択肢は頭の中にありませんでした。右手はどうせ手術してもまた出てくる、左手だって同じようにまた出てくるに決まっている、と思っていました。しかもこのときすでに右手の手術痕にある程度の後悔があったため、「両手首に手術痕を作って治らないかもしれない。」という状況を受け入れる気には到底なりませんでした。
このころから「治療や手術をせずにガングリオンと上手に付き合っていこう。」と考えるようになり、なるべく手首に負荷をかけないよう気を使うようになりました。今となってはこれが私にとっての正解であり、最初からそうしていればよかったと後悔しています。
私の場合、手首に気を使っていればとりあえず普段の生活に支障はなく、ガングリオンも悪化しないことがわかりました。もちろんそのときどきで多少ふくらんでしまうこともありますが、気にかけさえすれば逆にふくらみが小さくなることもあります。
また、バスケもある程度問題なくできるようになりました。重要なのは無理をしないこと、なるべく手首に負担をかけないようにすることです。バスケで手首に負担をかけないなんて無理だろう、と思うかもしれませんが、ある程度は可能です。うまく説明ができませんが、それは手首の動作の軽減を意識したり、バスケをする時間と手首の限界を見極めたり、さらには普段の生活からの負担の軽減をコツコツと積み重ねたりです。ちなみに高校卒業までバスケは週にだいたい5時間くらい、卒業後から24歳くらいまでは週に3時間くらいしていたと思います。
そもそも意識しなくても手首は普段からよく使うので、常に意識することが大事だし、悪化の気配を察知したらその原因となる負荷を考えてその負荷を軽減していくこと大切です。
かつてないほどの悪化
私の場合、「日常生活」と「スポーツ」を除けば、手首への長時間の負担は、以下の項目がありました。
- 高校卒業までは文字を書く行為
- 高校卒業後はパソコンのキーボードやマウスの操作
- 趣味ではテレビゲームやパチスロ
- 仕事やバイトでは手作業の業務
これらの負荷をうまく軽減しながらガングリオンとなんとか付き合ってきていましたが、2013年ころ右手首に変化が訪れます。今まで経験したことがない新しい負荷が増加し、ガングリオンがかつてないほど悪化、そして2度目の手術以降初めて日常的な痛みも出るようになってしまいました。
原因はスマートフォンです。
厳密にはスマートフォンではない可能性もあるのですが私の中ではスマートフォン以外に心当たりはありません。
私がスマートフォンを使い初めたのは2010年からだったと思います。スマートフォンの操作における手首への負担は今までにない新しいものであり、液晶の拡大および使用時間の増加によって手首への負担が増えていきました。
当初はネットの閲覧くらいでしかスマートフォンを使っていなかったのですが、ゲームが流行り、スマホでゲームをするようになってからはスマホの使用時間が劇的に増加していきました。毎日、電車通勤時に1時間半、夜も2~3時間ほどスマートフォンを操作していたのでガングリオンが痛みを伴うまでになってしまったようです。
このとき頭に浮かんだ解決策は2つ。1つはスマホの使用頻度を減らすこと。もう1つはスマホ使用時の手首の負荷を軽減することです。
しかしすでにスマホの使用頻度を減らす選択肢を選びたくないほどスマホゲームに夢中になっていたため、手首に負荷をかけないようにと試行錯誤をしていました。
予想外のできごと
人生最強のガングリオンに対していろいろと試してはみましたが、負荷をかけている時間があまりにも長いせいか、なかなか改善の兆しが見られません。
そんな状況で試したのが「テーピングによる手首の固定」でした。家にいるときは手首をテーピングで固定し、強制的に動きにくい状態にし、負荷を軽減させようと考えました。
テーピングで手首を固定させた状態でスマートフォンを操作してみて初めてわかったことがある。
「スマホの操作にも手首は意外と使っている。」
そう思うほどテーピングをした状態でのスマホの操作は不自由だった。これならテーピングをし続ければ改善されるだろう、と期待していたが数日後に事件が発生。実は寝るときもテーピングをしたままだったのだが、
ある朝起きたらガングリオンがなくなっていたのだ。
ガングリオンがない、ん?いや違う。寝ているあいだに手首の中でつぶれたのだ。よく見るとガングリオンがあった部位の周辺が少し腫れたようになっている。
病院に行くべきか少しだけ考えたが、ガングリオンはつぶれることがある、ということは知っていたので、痛みもないし様子を見ることにしました。幸いその日の夜には腫れが小さくなり、数日できれいさっぱり痕跡もわからないほどになくなりました。からだの中でどこかに散っていったのだろうが、どこか不思議で怖い話でもある。でも、とにかく手術以外でガングリオンが綺麗になくなったのはこの30年で初めてだったので、嬉しかったのは覚えている。
その後と現在、そして…
その後、しばらくしてつぶれた部位から少し横にずれた場所に新たなガングリオンの芽を発見しました。つぶれた影響で、手首の中では同じ部位に蓄積しにくい状態になっているのかもしれません。これからは新たな部位のこのガングリオンと付き合っていくのか、と思っていましたが、実はこのガングリオンは今現在は確認できません。私のスマホゲームのブームが一段落し、スマホの仕様時間が大幅に減ったせいです。
今現在、ガングリオンは左手首に少しあるだけで、手首を曲げたときに少しふくらみがわかる程度です。私の利き手は右手なので、左手首のガングリオンは大きさの変化も右手ほどはありません。
最後に…
ガングリオンの初回発症時以来ずっとできないことがいくつかあります。加重をかけるような負荷、腕立て伏せのような動作は痛みが伴うため、今でも避けるようにしています。(腕立て伏せは無理ですが、拳立て伏せはできます。)手術後数カ月で普通に使えるようになっても気が付くと再発しており、負荷をかけると痛い状態がずっと続いています。転倒して思わず手をついたとき、壁や床に手のひらで体重をかけたときなどはかなりの痛みが今でもあります。これはもしかするとしっかりとしたリハビリや筋力トレーニングを行えば解決するのかもしれませんが、それは同時にガングリオンの再発か悪化を呼ぶ可能性があるため、私の場合は実行できていません。
これはまあ、妥協するべきことだと思っています。
今後「スマホの出現」のような手首への新しい負荷がまたいつ発生するかわかりませんが、私にとってガングリオンは、ずっと意識して付き合っていかなきゃいけないモノなのでそうするのみです。